中編に引き続き、生後5日で臍帯炎を発症した子牛の症例紹介記事になります。
輸血の後、アレルギー反応と予想される両目の腫れ・下痢・心音の軽度な乱れに対してプレドニゾロンを合計8日間投与した後のお話です。
18〜24診目
プレドニゾロンの注射を今日で終わりにしようと考えていたその日、今までとは違った違和感があることに気がつきました。

左目の中央部分に白濁が見られます。今度はなんと、角膜炎を発症してしまいました。
プレドニゾロン注射の際は必ず抗生剤を併用するように気を遣っていましたが、それでも免疫抑制作用が子牛には強く働き過ぎてしまったようです。
この日は蒸留水とセファゾリンを使用した洗浄+点眼を行いましたが、
その4日後(私の3連休明け)にもう一度気になって覗いてみると…

左目の白濁部分が広がり、中心部は潰瘍一歩手前のような状態にも見えます。
翌日には流涙もみられ、右目にもポツンとした白濁が発生してしまっていました。
両目ともしっかり開いており、しょぼしょぼとした痛そうな(いずそうな)様子はありませんでしたが、数日間は蒸留水とゲンタマイシンを使用した洗浄+点眼を継続することにしました。


ちなみにこの時点で、臍帯はここまで細くなりました。

臍帯が退縮したことで、余った皮膚がつまめるほどになりました。よかった!
なんだかんだと治療が続いてしまっていますが、子牛自身は至って元気そうです。
ミルクも問題なく飲んでいるようですが、便の状態も相変わらず安定せず、泥状の軟便がなかなか治らない他には病的な部分は見当たりません。

そしてゲンタマイシンを使用した眼洗浄を5日間続けた結果…


左右とも、わずかな白濁が残る程度まで回復しました!特に痛々しかった左目が随分と良くなっています。流涙もみられなくなりました。
親牛の角膜炎に同様の治療をしてもこのような早い回復はなかなかみられないので、子牛の強い生命力を実感する出来事となりました。
ところで、貧血の状態はどうなったのでしょうか?
眼洗浄最終日の2日後、血液検査をしてみました。


輸血前後に値が改善した赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットのいずれも維持されていますね!
臍、便、目の状態も治療前後で改めて比較してみましょう。
臍:


↑2診目


↑24診目
臍帯がきちんと退縮し、先端も綺麗になっています。
便:


緑色水様下痢便は、茶色固形便になりました。
左目:


右目:


どちらも白濁がほとんど目立たなくなりました。
これにていずれの懸念点も解決され、時間はかかってしまいましたが治療を終了することができました。ご協力いただいた農家さんに心より感謝いたします。
前・中・後編にわたってお届けした今回の症例紹介ですが、臍帯炎に始まり貧血・下痢・アレルギー疑い・角膜炎と盛りだくさんの治療となりました。
子牛ということで治療への反応も良く、将来有望な子牛さんの心配事を減らすことができて一安心です。
今回の症例で得た経験や反省を、子牛だけでなく成牛の治療にも役立てていきたいと思います!
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