獣医師の渡邉佳和子です。
この記事をご覧になっている獣医師の方々の中には、農家さんとのやり取りが基本的には書き置きやメールで、
診療にお邪魔したときには基本的に獣医師単独でお仕事…という方も最近は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
特にこれから畑作業も忙しくなる夏場にはそのような場合も増えてきます。
そんなとき、我々は必ず
「往診に着いたらすぐ+往診から帰る直前」に乾乳牛舎を見に行くようにしています。
その理由は、
①現在どの牛が乾乳牛舎にいるのかを把握するため
②すでに完了したお産があれば、その旨を農家さんに伝えるため
③進行中のお産があれば状況を確認し、必要であればいち早く手助けするため
主にこの3つです。
①現在どの牛が乾乳牛舎にいるのかを把握する
診療を依頼された牛やワクチン投与予定の牛が、泌乳牛舎ではなく乾乳牛舎にいることがあります。また、分娩予定日が近いはずなのに乾乳牛舎に入っていない牛もまれに見つかります。
獣医の仕事からは少し外れるかもしれませんが、担当させていただいている農家さんの牛たちに関しては少しでも多くのことを把握しておき、日常管理の面からも手助けとなれればという思いから、このように日々見回りをしています。

②すでに完了したお産があれば、その旨を農家さんに伝える
寒い冬の時期であったり、産み落とされた場所が運悪く糞尿でひどく汚れた場所であれば、生まれたばかりの子牛はそのまま放置される時間が長くなるほど衰弱します。
最悪の場合は、せっかく生きて生まれてきても命を落としてしまうことも珍しくありません。
そのような事態を避けるためにも、生まれたての子牛を発見したら安全な場所に移動させた上で、早めに哺乳牛房に移していただくよう農家さんへ連絡をします。

↑胎子はすでに生まれて、胎盤も落ちています。
③進行中のお産があれば状況を確認し、必要であればいち早く手助けする
進行中のお産があった場合は、まずは産道内に異常がないかを確認し、陣痛が弱い・胎子がなかなか出てこないなど、必要そうであれば分娩介助に繋げるようにしています。
もちろん、我々が偶然ゆっくり進んでいるタイミングの分娩を見つけただけであって、もしかすると手を貸さなくても無事に自然分娩が完了できた可能性も十分にあります。
しかし、それ以上に陣痛微弱や胎子失位などで分娩が順調に進まなかった場合、母子ともに命の危険に晒されてしまうリスクを避けるため、
・まだ胎子が十分に産道から出ていない場合は、母牛にCaを注射して時間を空けてから分娩介助
→到着後すぐに見回りをすることで、母体血中Ca濃度の上昇~分娩の進行を待つ間に他の診療を進めることができます。
・すでに胎子の大部分が産道から出ている場合(肩が子宮頸管を抜けていればOK)、すぐに分娩介助
このようにして分娩を手助けしています。
今回行った分娩介助について
実際に今回分娩介助したときの様子をご紹介します。

往診先に到着後、いつも通り乾乳牛舎を見にいくと、すでに胎子の両前肢(外陰部から入ってすぐのところには顔も)が産道から出てきていました。
農場内で別の場所にいた代表に連絡をとり、一緒に分娩介助します。
前肢に産科ロープをかけて

引っ張るときは全身の力を使うため、残念ながら写真は撮っている余裕がありませんが…

メスの子牛が無事に生きて生まれてきてくれました。
子牛が出せたらすぐに上の写真のように
両前肢を折り曲げて伏臥姿勢にさせ、母牛に舐めてもらいます。
子牛の自発呼吸が怪しい場合は冷水を頭から被せて刺激を与えたり、
母牛に舐めさせるより先に乾燥した藁でしっかりと全身を拭くように刺激してあげます。

がんばりました☺️
まとめ
このような取り組みを日々の習慣に組み込むことで、頻度こそ高くはありませんが、今までに何頭もの無事な誕生を見届けることができました。
反対に何か大きな異常(分娩前からしばらく母牛が立てないなど)があった場合は残念な結果につながることも多く、いかに「明らかな異常に陥る前のタイミングで手を差し伸べること」が大切かということも実感しています。
貴重ないのちの誕生が悲しい結果を迎えることのないよう、母子ともに安全な分娩を目指して、これからも見守り続けていけたらと思います。
今回もお読みくださりありがとうございました!

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