1月も半ばとなってしまいましたが、ブログをお読みくださっている皆様、新年明けましておめでとうございます。獣医師の渡邉佳和子です。
我々はと言いますと、年明け早々から今年度イチと言えるほどの診療頭数を抱える日々が10日間ほど続いており、非常にバタバタと過ごしておりました。
昨日・今日あたりからようやく落ち着いてきたので、忙しさの要因の1つであった”第四胃変位ラッシュ“について記録しておこうと思います。
第四胃変位(よんぺん)とは
・第四胃変位=第四胃が本来の位置(腹底)から左または右体側へ(大体はガスの貯留を伴って)変位し、食欲不振や消化管通過障害を起こす疾患
※牛をお尻側から見た図

・分娩2~3週間後に多い→胎子がいた部分のスペースが空く+分娩後に餌をしっかり食べられない状態(ケトーシスなど)があると、ルーメンが小さいのでさらに腹腔内にスペースが空く→第四胃がスポッと上がってきてしまう
・診断方法→聴診によるピング音(有響音)聴取

それぞれ発症の際にピング音が聴取される範囲
・治療方法→基本的には外科手術一択

立位右膁部切開術で左方変位を整復する場合はこんな感じです

右膁部に開けた切開部から腹腔内に腕を入れ、ガスを抜いて腹底に落とした第四胃を切開部まで引き上げ、幽門周囲の大網を腹壁の筋層に縫い付けて第四胃を固定します。
この方法の場合、図の通り、第四胃は本来の位置とは全く同じには戻せません(牛を仰向けにして行う傍正中切開術の場合は腹底に戻せます)。
細かい要因や他の治療/手術法については各文献をご参照ください。
今回、何が起こっていたのか
第四胃変位の手術日程は以下のような感じでした。
症例は全て左方変位で、最初の3頭は午前中に診断→午後に手術、最後の1頭は診断した翌日に手術を行なっています。
1日目:初産牛、4月分娩予定の受胎牛
2日目:2産牛、3月分娩予定の受胎牛
3日目:初産牛、7月分娩予定の受胎牛
2日開いて…
6日目:初産牛、3月分娩予定の受胎牛
このような牛たちです。
ご覧の通り、いずれも前回分娩からはしばらく時間が経っている牛で、特に初産牛に固まって発生していることもわかります。
どうして同じような条件の、しかも通常であれば第四胃変位が発生しにくい時期の牛たちに連日発生したのか、今回はいくつか要因がありました。
①未経産~初産牛を中心にウイルス性と考えられる風邪(高熱を伴う肺炎、角結膜炎)が急激に蔓延しており、牛群全体の免疫力や体力が低下していた
②フリーストール牛舎において水流の下部にあたる初産~未経産牛の水槽に水が十分な量行き渡っておらず、水分摂取不足に陥っていた
→食欲低下、反芻低下、消化管運動の停滞、乳量低下が多発した
③年明け、急激な気温低下があった
このような要素が重なった結果、初産牛を中心に次々と第四胃変位を発生したことが考えられます。
いずれの牛も、術後の経過は今のところ順調です。
最後に、今回の手術風景をいくつか切り取ってみましたのでご覧ください。

牛は枠場に入ってもらいます

まずは毛刈り

局所麻酔をかけます

術野の消毒

切開部から腕を入れ、変位した四胃に管を刺して溜まったガスを抜いています

四胃につながる大網を引っ張り出しています

大網に掛けた糸を腹壁に通し、しっかりと縛って固定

筋層の縫合を終え、最後に皮膚を縫っているところ

真冬にはストーブが大変ありがたいです

模様がずれることなく縫合できました!
おわりに
牛の臨床獣医師にとっては基本のキのような内容ですが、今回は”よんぺんが初産の受胎牛で流行る”という珍しい事態だったので、ぜひ記憶に留めておきたいと思います。
今回もお読みくださりありがとうございました!


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