はじめに
牛の健康を保つうえで、非常に重要視されている考え方のひとつに「BCS(ビー・シー・エス)」というものがあります。これは「ボディ・コンディション・スコア(Body Condition Score)」の略で、牛の体型や脂肪のつき具合を数字で評価する方法です。
BCSってどんなふうに見るの?
BCSは、牛の背中や腰、しっぽの付け根あたりの骨の出方や丸みを見て、痩せすぎていないか、または太りすぎていないかを判断する方法とされています。
実際には直接牛に触れてみたり、後ろからシルエットを観察したりして、体型の特徴をつかんでいくことが多いようです。また牛群全体をよく観察して、同じ月齢なのに小さすぎる・大きすぎる等を比較することもあります。
一般的には、5段階または9段階のスコアで評価され、数字が小さいほど「痩せている」、大きいほど「太っている」とされます。現場では、さらに細かく「3.25」「2.75」などのように、0.25刻みでスコアを記録することもあるそうです。

BCSの観察ポイント
BCSを判定するときには、次のような部位に注目すると言われています。
☑️腰骨や坐骨、腸骨の出っ張り具合
→ 骨がゴツゴツと目立っていると、痩せているとされることが多いです。
☑️尾根(尾てい骨周辺)のくぼみの深さ
→ 深くくぼんでいると痩せ気味、脂肪で丸く見えると太り気味の傾向があるそうです。
☑️背骨のラインの角ばりや丸み
→ 角ばっていると脂肪が少なく、丸みがあるとやや脂肪が蓄積していると判断されることが多いです。
☑️肋骨の見え方(乳牛ではやや見えているのが正常とも言われています)
→ 極端に浮き出ていると、痩せすぎのサインとされます。
これらを総合的に見て、「今のスコアは3.0くらいかな?」「少し痩せてきたから2.5かも」といった形で評価していきます。

なぜBCSが大事なの?
BCSを確認することで、牛がしっかりとエネルギーを蓄えられているかどうかを知る手がかりになると言われています。これは、分娩や繁殖、病気の予防などにおいて非常に重要なポイントです。
たとえば、痩せすぎている場合は、繁殖に必要なエネルギーが不足したり、空胎日数(分娩後、次の妊娠が成立するまでの日数のこと)が長くなる傾向があり、繁殖成績が悪化する可能性があるそうです。
反対に、太りすぎている牛は、分娩時のトラブルや分娩後の代謝障害などの疾病につながる可能性があるとされています。
また、ルーメン(第一胃)の充足度を評価する、ルーメンフィルスコアというものもあります。これはルーメンの充足度を5段階で評価し、乾物摂取量や胃の働き具合を把握する指標となっています。
おわりに
本来、BCSは誰が見ても同じ数値にならなければいけませんが、全国の誰もが同じように判断するというのもまた難しい話です。ですが、少なくとも我々TK-Lab.のメンバーは同じ目で見られるように、日々の検診の中でコミュニケーションをとりながら、BCSを一致させています。
一つ前のブログでTK-Lab.メンバーの渡邉が紹介している分娩前報告書でも、BCSは非常に重要な役割を果たしています。ぜひ、こちらも併せてお読みください。
牛は、自分の体調を言葉で伝えることができません。だからこそ、BCSのような「見た目からのサイン」を読み取ることが、とっても大切です。
BCSは、牛の健康状態や栄養バランス、繁殖の成功にまで関係する、いわば“体型から読み取る健康バロメーター”のようなものなのです。
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