急性第一胃鼓脹症(泡沫性)発症牛に対する簡易フィステル形成術

獣医師の渡邉佳和子です。
冬本番、いかがお過ごしでしょうか?新篠津村は毎日雪がどんどん積もっています。

今回の記事では、代表にとっておよそ20年ぶり4〜5回目となった「簡易フィステル形成術」についてご紹介します!

この手術を行なった経緯は以下のとおりです。

・2日前から食欲が低下していたホルスタイン経産牛の第一胃が大きく鼓脹

・「消泡剤や套管針でガスの抜去を試みるも泡沫性の鼓脹症でほとんど鼓脹は治らない」と夜間に農家さんから電話をいただく

・簡易フィステル形成術を試みるため、夜間往診にて実施

第一胃切開術にてルーメンをしっかりと開け、内容物をできるだけ出すことが理想的ですが、それを行うための器具・機材が揃っていないことなどから、こちらの方法をとっています。

さて、今回はその術式について、自作の図を用いて説明していこうと思います。

まず第一に、術創は最終的にルーメン内容物に汚染されるため、普段の手術のように滅菌器具や滅菌ガウンは基本的には使用しません。

つなぎにヘッドライト、操作性をよくするために手術用グローブを身につけて行いました。

①術野の毛刈り、消毒、局所麻酔

こちらは普段の第四胃変位整復術と変わりません。
今回は套管針を刺した傷口があったので、その部分を中心に切開線を設定しました

左膁部が大きく膨れ上がっているのがわかります。
赤く見えるところが套管針を刺した穴です。

②皮膚、筋層、腹膜を切開

縦8cmぐらいを目安に一層ずつ慎重に切開します。
ルーメンがパンパンな状態なので、誤って一気にルーメンまで切ってしまわないよう、慎重に行います。

③皮膚〜筋層〜腹膜を一層に束ねて、ぐるっと一周かがり縫い

非吸収糸と角針を使って縫合します。だいたい1〜1.5cm間隔です。
この時も、針でルーメンを刺してしまわないように慎重に進めます。

④ルーメンにアンカー糸をかける

30cmほどの非吸収糸を丸針でルーメン壁にかけ、創外に引き出すとっかかりとします。
2箇所だと胃壁が裂けてしまう危険があるため、4箇所以上が理想的です。
針を刺した瞬間から少しずつ泡沫性のガスが漏れ出てきますが、慌てずにおこないます。

⑤ルーメンを切開

④でかけたアンカー糸を外側に引っ張りながら、上図のように縦に切開します。
切開した瞬間にガスと内容物が飛び出すので、できるだけ術者に直撃しないように注意します。

⑥ルーメンを固定

ルーメンの切開部分を、③でかがり縫いした皮膚に沿わせて反転させ、ぐるっと一周かがり縫いしてルーメンを皮膚に固定します。
ルーメン壁を反転させて皮膚の上から固定することで、ルーメン内容物が筋層間や腹腔内に漏れることを防ぐことができます。

断面図はこんな感じです。

ただし、今回はルーメンの鼓脹が強く、創外に胃壁を引き出す余裕がなかったので、やむをえずルーメンの切開縁と皮膚の切開縁を重ねる形でかがり縫いしました。

⑦ルーメン内容物をできるだけ取り除く

⑥までで手術そのものは終わりですが、鼓脹により前にも後にも進むことができずパンパンに溜まった内容物をできるだけ取り除くことが理想的です。

漏斗と園芸用ホースを使ってルーメンの中に温湯を注ぎ、皮膚越しにルーメンを押して中身をほぐしながら外に排出させます。今回は10L注入→排出を4回繰り返しました。

押しているところ。赤丸が術創、矢印が飛び出してきた内容物です。

これにて終了です!

手術直後の様子。だいぶ左膁部が縮小しました。

翌朝の様子。術創から内容物が出続けているのがわかります。
この日の朝は大幅に乳量と反芻量が回復し、餌を食べ始めたそうです!
このまま順調に回復してくれることを願うばかりです。

おわりに

近年では症例が少ない泡沫性の急性鼓脹症に遭遇し、無事に手術を終えることができて大
変勉強になりました。治療にご協力いただいた農家の皆様に感謝申し上げます。

〜往診中のひとコマ〜

最近よく子牛の周りで暖をとっている茶トラ猫、1匹だと思っていたら実はよく似た2匹が日々入れ替わっていたのでした。

冬の風物詩・カーフジャケット
風邪良くなるといいね!

白目を剥いて熟睡する牛ちゃん

今回もお読みくださりありがとうございました!

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