牛の解剖学①「頭部編」


はじめに
こんにちは!安藤薫生です。今回のブログは牛の「あたま」についてご紹介します。
牛の頭は、見る・聞く・食べる・考えるなど、多くの大切な機能が詰まった場所です。今回はその「頭」に注目して、骨・筋肉・神経の構造やその働き、そして頭部に関わる病気について見ていきましょう。

❓ミニクイズ
牛の上あごには切歯(前歯)がある?
A. ある B. ない

答えは記事の最後で解説します!

🦴 骨について

牛の頭の骨は、頭蓋骨(とうがいこつ)や下顎骨(かがくこつ)などで構成されています。頭蓋骨は脳を保護する役割があり、非常に頑丈にできています。大きな眼窩(がんか:目のくぼみ)や、角の生える部分(前頭骨)も特徴的です。下顎骨は噛む動作を支える骨で、日常的に反芻を行う牛にとって重要な部位です。

🦷 歯について

牛には上下合わせて32本の歯があります。上顎の前歯(切歯)はなく、代わりに硬い歯茎の歯床板(ししょうばん)があります。
一方、下顎には8本の前歯があり、草をつかむときに活躍します。奥歯は上下にしっかりと並び、すりつぶすように草を咀嚼します。歯のすり減り具合を見ることで、年齢の目安や健康状態を確認することもできるそうです。
口の中に手を入れる手技(治療)もありますが、その際に奥歯で噛まれると死ぬほど痛いんです…

💪 筋肉について

頭部の筋肉の中でも特に発達しているのが「咀嚼筋(そしゃくきん)」です。牛は一日に何千回も反芻するため、この筋肉が非常によく鍛えられています。咬筋(こうきん)や側頭筋(そくとうきん)は、強く上下に顎を動かす役割を果たします。

🧠 神経について

牛の顔にはたくさんの神経が走っています。目や鼻、口に情報を送る三叉神経(さんさしんけい)や、表情をコントロールする顔面神経などが代表的です。さらに鼻先はとても敏感で、微妙な刺激にも反応します。

🩺 役割と関連する病気

牛の頭部は、視覚・嗅覚・聴覚・味覚といった様々な感覚器が集まり、周囲の状況を把握するために欠かせません。咀嚼による消化の第一段階もここから始まります。

また、牛の頭部を見ることでその子の健康状態を伺うこともできます。耳が垂れ下がっている、目がしょんぼりしている、口を開いて暑そうに呼吸をしている、頭が垂れ下がってぐったりとしているなど、頭部や顔を見ることで多くの情報を得ることができます。

おわりに

牛は本来穏やかな動物ですが、診療や授精を行うときには、その行為への嫌悪感や恐怖心から頭を大きく振ったり、頭突きをするなどして抵抗することがあります。頭部だけの動きでも、人間よりも大きい生き物なので、お互いに怪我をする可能性があります。特に針を使うシーンでは、しっかりと保定をしてあげることがお互いの安全を守ることにつながります。

私たちTK-Labでは、留置針を入れる際には“2点留め”でガッチリ保定するようにしています。2点留めを行うことで横の動きだけでなく、縦の動きも抑制することができるので、より安全に治療を行えます。

❓ミニクイズの答え合わせ
牛の上あごには切歯(前歯)がある?
→ 正解は「B. ない」です!上あごには歯床板(ししょうばん)があります。

今回は頭部について詳しくご紹介しました。次回は首と肩周りの筋肉、神経、骨、はたらきについてご紹介します!お楽しみに!!

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