はじめに
酪農の現場で働く私たちにとっては、毎日のように目にする存在である「耳標」。
でも、初めて牛を見る人にとっては、なぜ牛の耳に黄色い札がついているのか、不思議に思うかもしれません。今回はその耳標の役割と、個体識別番号についてご紹介します。

耳標とは?
耳標とは、牛の耳に装着されている黄色いプラスチック製のタグのことです。これは「個体識別番号」が記載されており、日本のすべての牛に取り付けが義務づけられています。
この番号は10桁で構成されており、一頭一頭に割り当てられた世界に一つだけの番号です。まるで人間のマイナンバーのように、牛の「戸籍」のような役割を果たします。
過去のブログでもご紹介しましたが、我が社のスクラブの左腕のデザインは耳標をイメージして作成しました。


なぜ必要なの?
個体識別番号があることで、以下のような情報が正確に管理できます。
・生まれた場所・日付
・移動履歴(どの農場からどこへ)
・と畜された日付と場所
こうした情報は、家畜改良、感染症予防、食品のトレーサビリティ(食品が生産から消費されるまでの全ての段階で、その移動経路を追跡できる仕組みのこと)の確保などに役立っています。2001年に発生したBSE(牛海綿状脳症)をきっかけに、2004年から全頭に義務化されました。
人工授精師にとっての耳標の役割
私たち人工授精師は、日々たくさんの牛の繁殖に関わっています。その際、耳標番号を使って繁殖履歴を管理しています。
例えば「前回の授精はいつだったか?」「受胎しているか?」「この牛は何産目か?」といった情報を、耳標番号と結びつけて記録・確認することができます。
授精だけに関わらず、診療全般で耳標番号は重要な役割を果たしています。特に薬剤を投与する時や、授精の前には必ず耳標番号を確認して、絶対に他の牛と間違えることがないように努めています。

🐮ちょっと休憩コラム〜牛にまつわることわざ〜
「牛の歩みも千里」
意味:どんなにゆっくりでも、毎日一歩ずつ進めば、やがて大きな成果につながる
ちなみに…牛の耳標には種類があります
日本では通常、出生時に耳標を一対(両耳)装着します。耳の表面だけでなく裏側にも装着するため、両耳で4枚付いています。番号の書かれ方には手書き用と印字済み用があり、自治体によって異なる場合もあるようです。

↑生まれたばかりでまだ耳標がついていない子牛

↑また、色は黄色が一般的で、遠くからでもはっきりと識別することが可能です。
さらに、海外では電子タグ(RFID)を使う例も増えているんだそうです。
個体識別番号は誰でも調べられる?
実は「牛の個体識別情報検索サービス(https://www.id.nlbc.go.jp/)」で、誰でも牛の個体識別番号を入力すれば、その牛の産地や履歴を見ることができます。

スーパーなどで牛肉のパックに番号が書いてあるのを見たことがありませんか?下図の赤字部分が個体識別番号です!

これを使って、この牛がどこで育ち、どのような経路で流通したかを確認できるのです。食の安全を守る仕組みとして、とても大切な制度です。
最後に
耳標や個体識別番号は、牛を正しく管理し、安全な牛乳や牛肉を消費者に届けるために欠かせないツールです。ぜひ牛肉を買った時、牧場で牛を見た時にはチェックしてみてくださいね!
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