はじめに
これまで6回にわたって牛の解剖学を紹介してきました。
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ここからはより詳細に牛の体を分類してご紹介していきます。まずは前回の前肢・後肢編に続いて、蹄を学んでいきましょう。
牛は1日の中で、歩き、採食し、反芻し、横になり、また立ち上がる。これを繰り返しています。そのすべての動作の土台になっているのが「蹄」です。
外から見ると硬い殻のように見える蹄ですが、内部には精密な構造が隠れています。
今回は、そんな蹄の構造とその役割を見ていきます。
蹄は「硬い殻」だけではない

蹄は大きく分けて『蹄表皮』と『蹄真皮』から構成されています。
『蹄表皮』
蹄表皮は角化した硬い組織で、 蹄冠表皮、蹄壁表皮、蹄底表皮、蹄球表皮に分かれます。
この部分が私たちの目に見えている“蹄”です。
蹄表皮の内側には、『蹄真皮』があります。さらに蹄壁の内面では、表皮葉、真皮葉(蹄葉真皮)が複雑にかみ合っています。
副蹄の存在

牛には主蹄のほかに、『副蹄表皮』、『副蹄真皮』からなる副蹄があります。
普段は地面に強く接することはありませんが、体勢の変化や不安定な地面では補助的な役割を果たします。偶蹄類としての進化の名残であり、牛の歴史を感じさせる構造です。
白帯とは

蹄の裏側を見ると蹄壁と蹄底の境目に見える、やや白っぽい帯状の部分です。
蹄壁表皮と蹄底表皮は、同じ角質でも性質が少し異なります。
蹄壁表皮は縦方向に角細管が走る、非常に硬い構造。
蹄底表皮はやや柔らかく、摩耗しやすい構造。
白帯は、この2つの角質の境界であり、両者をつなぐクッションのような角質で構成されています。
この部分の隙間や亀裂が生じ、そこから細菌や異物が入り込むことで炎症が起こる状態を白帯病といいます、
また蹄病には他にもDDというものがあります。これは写真の中にもありますが、蹄球の周辺の皮膚に起こる炎症です。肢皮膚炎ともいいます。
他にもいくつかの蹄病治療の様子を紹介します。

⇧こちらは肢間に結節ができてしまい、それをメスで切り取った後の写真です。



⇧そしてこちらは“げた”と呼ばれる器具を装着している様子です。
正式には蹄ブロックと呼ばれることもあるそうです。
これは木や樹脂でできた小さなブロックで、痛みが出ていない方の蹄(健康な蹄)に装着し、高さを出すことで痛い方の蹄にかかる負荷を軽減しています。
前回の「牛の解剖学―前肢・後肢編」でもご紹介しましたが、牛の蹄病の多くは後肢に発生します。これは前肢と後肢の骨格の差に由来します。前肢は肩甲骨周辺の筋肉を通じて全身骨格とつながっており、この筋肉がサスペンションの役割を果たしています。
しかし、後肢は骨盤を通じて全身骨格と接続されており、前肢のようなサスペンション効果は期待できません。そのため衝撃がダイレクトに伝わる後肢に蹄病が集中しているのです。また後肢の蹄の中でも外側の蹄に体重が集中しやすく、内側よりも外側の蹄病が多い傾向にあります。
このように解剖学を勉強すると、どうしてその病気が発生しやすいのかのヒントを得ることができますね。
そして併せて読んでいただきたいのはこちらの記事です。
牛の赤ちゃんの蹄の秘密をご紹介しています。
おわりに
人間も同様ですが、牛の足が痛いと餌槽に向かうのもパーラーに向かうのも億劫になり、採食低下や起立困難、ストレスの増幅につながります。特に牛は立てなくなってしまうとなかなか厳しい場面が多いため、蹄は大事だな…と改めて思いました。
最後に我が社のかわいらしい足裏?肉球?をご紹介して終わりたいと思います。今回もご拝読ありがとうございました🐾






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