第16回全日本ホルスタイン共進会備忘録(獣医師編)

獣医師の渡邉佳和子です。

先日10/25~26にかけての2日間、第16回全日本ホルスタイン共進会 北海道大会が開催されましたね!我々の担当牧場さまも複数頭出品されるとのことで、通常診療の合間を縫って応援に駆けつけるためにバタバタと過ごした1週間でした。

今回の共進会本番期間中においては、我々が関わった牛たちにアクシデントはなく、獣医師としては出る幕のないまま終わることができ、一同ホッと胸を撫で下ろしています。

しかし、今大会では全日本大会ならではの衛生対策要領が設定されており、共進会までのおよそ半年間にわたって獣医師としても準備に携わらせていただきました。

具体的にどんな要領が設けられ、獣医師としては何をする必要があったのか、備忘録としてまとめておきたいと思います。

参考資料「第16回全日本ホルスタイン共進会衛生対策要領」↓

主にこちらの資料から抜粋して見ていきます。

獣医師として必要なこと

獣医師が関与するのは以下の部分です。

順番に確認していきましょう!

↑日本ホルスタイン登録協会ホームページ「全日本ホルスタイン共進会」より

・1-(1)臨床検査の実施 について

ホームページより抜粋した画像の①では「居住している都道府県を出発する~」となっていますが、道内のみの移動の場合は「都道府県」→「市町村」となり同様に適用されます。

出発の①概ね2週間前 ③72時間以内の2回、臨床検査を行い、証明書を発行し、農家さんにお渡しする必要があります。

実際に使用した証明書は以下のものです。

・1-(2)出品牛の検査 1-(3)予防接種の実施 について

ヨーネ病の検査を家畜保健衛生所に依頼し、陰性証明を農家さんにお渡しする必要があります。今回の出品農家さんはカテゴリーⅠに該当したので、搬入基準日(2025/10/24)の3ヶ月以内(=2025/7/25~)に検査を行いました。

加えて、共進会期間中に開催されるゴールデンナショナルセールに出品する牛に関しては、牛伝染性リンパ腫の陰性証明も必要となるので注意が必要です。

↑「第16回全日本ホルスタイン共進会規則」より

次に予防接種についてですが、滅多にお目にかからないワクチンを今大会のために準備し、接種する必要がありました。

①炭疽生ワクチン

②牛流行熱・イバラキ病混合不活化ワクチン

③牛異常産4種混合不活化ワクチン

20mlと10mlの2規格が販売されていたので、必要量に合わせてできる限り廃棄が出ないように組み合わせて購入しました。

④牛呼吸器病6種混合ワクチン(こちらはお馴染みですね)

中身はこんな感じです。

接種頭数(接種時点では出品牛は決定していないので、全日本大会に進む可能性のあるすべての牛が対象)は選ばれし数頭なので、不活化ワクチンは2回接種するとはいえどうしても余りが出てしまうのが勿体無かったです。

特に炭疽ワクチンに関しては接種量が0.2ml/頭なので、1本10mlで50頭分!仕方のないことですが、大部分は廃棄となってしまいました。

接種についての指定期間は以下のとおりです。

生ワクチン(①④)は6ヶ月~3週間前の間に1回、

不活化ワクチン(②③)は同期間内に4週間隔で2回、接種する必要があります。

前もってスケジュールを考え、ワクチンを早めに購入することでスムーズに接種できました。

ちなみに、共進会では写真のように牛が時計回りにゆっくりと歩き、審査員は主に輪の内側から牛を見ることになります。万が一接種の際にアクシデント(牛が動いて針先で皮膚を切ってしまう など)があっても目立たないよう、頭部をしっかり保定した上で、左側頚部に注意深く筋注するようにしています。

接種が完了したら、証明書を発行して農家さんにお渡しします。

実際に使用した証明書は以下のものです。

・妊娠鑑定証明書について

↑日本ホルスタイン登録協会ホームページ「全日本ホルスタイン共進会」より

↑「第16回全日本ホルスタイン共進会規則」より

今回は第6部(未経産生後20月齢以上の部、妊娠鑑定済み)に出品する牛がいたので、こちらに関してのみ、複数回の妊娠鑑定証明書発行も必要となりました。

必要なことは以上となります!

おわりに

このような大変貴重な経験ができたのは、長年にわたり共進会および酪農業において精力的な取り組みを続けられ、私たち獣医師を信頼して診療を任せてくださっている酪農家の皆さまのおかげ以外の何物でもありません。まだまだひよっこの私も、微力ながら全日本大会出品牛のそばで獣医師として関われたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

この先の5年間、さらに腕を磨き、勉強を怠らず、また全日本大会にご縁があった際には今よりももっと成長した姿で牛たちのそばに寄り添えたらと思います。

5年後、獣医師として全日本大会に関わる誰かにとってこの記事がお役に立てば幸いです。

ここまでお読みくださりありがとうございました!

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